国家(下) - プラトン ★★★★☆

下巻では、国を支配する人々(政治家、官僚)は、哲学者でなければならないという話から始まります。理由は、この世の真実を知るのは、哲学者のみであり、故に正しく国を統治出来るのも哲学者のみであるという論法です。
そして、この哲学者が統治する国、優秀者支配制から次のような順番で、国家がダメになっていくと述べられています。

優秀者支配制→名誉支配制→寡頭制国家→民主制国家→僭主独裁制国家

現在の日本やアメリカは明らかに民主制国家であり、2000年以上もたつのに人類は進歩していないんじゃ?と思ってしまいます。ちなみに、以下は民主制国家の成れの果てが述べられた箇所。

先生は生徒を恐れてご機嫌をとり、生徒は先生を軽蔑し、・・若者たちは年長者と対等に振舞って、言葉においても行為においても年長者と張り合い、他方、年長者たちは若者たちに自分を合わせて、面白くない人間だとか権威主義者だとか思われないために、若者たちを真似て機智や冗談でいっぱいの人間となる

2000年以上前の文章とは思えません

また、下巻には有名な洞窟の話が出てきます。これはものすごく大雑把にいうと、「世の中の多くの人々が見ている世界は、灯に照らされたイデア(実相(本当のもの))の影であり、イデアを認識出来るのは、哲学をしている人だけだ」という内容です。

この話にしても、先の国家システムの話にしても、プラトンは完璧主義者というか理想主義者というか、世の中には絶対普遍の真理があるという考えを持っています。社会に出る前の私だったら、ものすごく傾倒していたと思います(笑)。この考え方は、ゲーデル不完全性定理や、最新の認知科学などで否定されています。
だからといって、この本の価値が下がるとは思えません。良い国とは?正義とは?善とは?幸せに生きるには?有能な人間になるには?といった現在でも解決されていない、多くの重要なテーマについて語られており、これらの問題に向き合う際にこの上なく良い指針となりえるからです。

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